初心者ボカロPの皆様。
高いプラグインの話をする前に、ひとつ言わせてください。
まだ1曲も完成させたことがないなら、高い機材もプラグインもいりません。
これは正直今のレベルによります。
ミックスで「これがやりたい」がはっきりしている人は、有料プラグインを買うと近道になります(その話は 無料EQで足りる?Logic純正とFabFilter Pro-Qを実際に使ったボカロPの話 に書きました)。
でも「そもそも曲が最後まで作れるか不安」という段階なら、話は別です。
まずやることは、持っているDAWに最初から入っている音源だけで、1曲を最後まで作りきることです。
2012年ごろから「曲を作りたい」と思っていた
DTMで音楽を作りたいと思い始めたのは、2012年ごろです。
最初に使ったのは Cubase LE(オーディオインターフェースに付いてきた軽量版)でした。
でも、画面のどこに何の機能があるのかがそもそも分からず、ほとんど触らないまま止まりました。
そこからしばらく、「いつかちゃんとやろう」と思いながらDAWを開かない期間が続きます。実際に1曲を全て完成させられたのは、それからずっとあとのこと。長いあいだ「作りたいのに、作っていない」状態でした。
それまでに、初音ミクや巡音ルカなどの合成音声ソフトを買ったりしましたが、なんの役にも立ちません。そこまでいくまでに止まっていたので。
止まっていた理由はいろいろありますが、いちばん大きかったのは「コードとドラムが分からない」でした。
メロディはなんとなく浮かぶのに、その下に何を置けばいいのか分からない。毎回そこで手が止まっていました。
先に結論を書くと、つまずいたのは次の3つです。
- コード … どのコードを、どの順番で置けばいいのか分からない
- ドラム … キックとスネアをどこに置けば「曲」に聞こえるのか分からない
- ベース … コードとどう関係しているのか分からない
この3つは、持っているDAWの音源で全部なんとかなります。順番に書きます。
DAW選び:Cubase LE でつまずいて、Logic に移った
私の最初のDAWは Cubase LE でした。
付属してきたので使い始めましたが、どこに何のボタンやメニューがあるのかが、そもそも分からない。
触っているうちに時間だけが過ぎて、結局まともに使えませんでした。
そのあと Logic Pro に切り替えて、ようやく前に進みました。
Logic は iPhone に近い感覚で操作できて、画面も見やすい。「どこに何があるか」で迷わなくなったのが、私にはいちばん大きかったです。
もし「有料のDAWを買って続かなかったら…」と不安なら、Macなら GarageBand から始めるのもありです。無料で最初から入っていて、ソフト音源もドラムもループも一通りそろっています。GarageBand のプロジェクトはほぼそのまま Logic Pro で開けるので、続きそうなら後から移行できます(私自身は GarageBand は使わず、Cubase LE から直接 Logic に移りました)。
考え方はどのDAWでも同じです。新しいものを買う前に、今あるものの付属音源で1曲。
遠回りに見えて、これがいちばんの近道でした。
コード:どのコードを置けばいいか分からなかった → Scaler 3 に助けてもらった
3つの中で、私が唯一お金を払ったのがコードです。
DAWの付属音源でピアノは鳴らせても、「Cの次に何を鳴らせば気持ちいいのか」が分かりませんでした。
本を読んでも、いざ自分の曲になると手が止まる。EQのときと同じで、知識と実作業がつながらないタイプです。
そこで、1曲目に取りかかる前に Scaler 3(Plugin Boutique)を買いました。
2026年時点で通常99ドル前後、Plugin Boutique の日本円表示で約17,000円です(セール時はもっと下がります。Scaler 1・2を持っている人は割安なアップグレード版があります)。
結果として、私の1曲目は、この Scaler で組んだコード進行から作りました。
これが無かったら、たぶんまだ1曲目を完成させられていません。
Scaler 3 で私ができるようになったこと
- コードをおすすめしてくれる。キーを決めると「次に来やすいコード」の候補が並ぶので、そこから選ぶだけで進行になる。理屈は後から分かればいい、という気楽さがありました。
- キー(スケール)から外れない。私はCマイナーにして、王道の進行ひとつで作りました。選べるコードがキーに沿っているので、初心者がやりがちな「なんか気持ち悪い音」になりにくい。
- 組んだコードはMIDIで書き出せる。DAWのトラックにそのまま置けるので、あとは自分の好きなピアノやシンセの音で鳴らすだけ。
実際に1曲目で組んだのは、Cマイナーの小室進行(Cm→A♭→B♭→E♭)です。J-POPで数えきれないほど使われている「王道進行」で、基本はこれをループ。変化をつけたいところだけ、Scaler が出す候補から選んで差し替えました。それだけで曲の土台になりました。
コードを自分でひねり出せなくても、候補から選ぶだけで進行が最後までつながる。それを一度でも体験できたのが、私にはいちばん大きかったです。
私はラフマニノフのピアノ協奏曲2番第1楽章が好きなので、Cマイナーにしました。ただ、最初は無理せず C メジャーか A マイナーでいいと思います。
Scaler にはコードに合わせてベースやメロのパターンを作る機能もありますが、私はそこまでは使わず、コードを決めるところだけ頼りました。

キー(ここではCマイナー)を決めると、それに合うコードの候補が並びます。
ここから選んでいくだけで進行になる。
念のため書くと、コードも本当はDAWの付属機能だけでなんとかできます。
Studio One や Cubase にはコードトラックがありますし、YouTubeで「王道進行」を調べて打ち込むだけでも曲になります。
私は Logic を使っていて、Logic にはコード提案の機能がなく、そこだけどうしても越えられなかったので Scaler に頼りました。
ちなみに余談ですが、コード進行そのものには基本的に著作権が及ばないので、人の進行を参考にするのは問題ないです。まあ、実際は歌メロなども絡むので、まるごと同じにはなりませんが。
ドラム:キックは1・3拍、スネアは2・4拍。これを崩さない
ドラムは、お金をかけませんでした。覚えることは1つだけです。
- キック(バスドラム)を1拍目と3拍目
- スネアを2拍目と4拍目
これを知らなかったので、私はドラムができませんでした。
4拍子の曲なら、まずこれを機械的に置くだけで「ドラムっぽい」リズムになります。あとはハイハットを8分で刻んでおけば十分です。
私の1曲目は、Logic の Drummer(リズムパターンを自動で作ってくれる機能)で、アンビエント寄りのバラードみたいな、いちばんシンプルなパターンを選んだだけです。
それでも、ドラムが入った瞬間に「あ、曲になった」という感じがはっきりありました。そのあとで、ドラムの音だけ好みの音源に差し替えていました(Logicの音源)。
パターンは自動、音は好みで、というやり方です。
大事なのは、慣れないうちはこの骨組みを崩さないことです。
Drummer の結果を手で編集するときも、「キックは1・3、スネアは2・4」だけは動かさないと決めておくと事故りません。
「かっこよくしよう」としてキックを動かしまくると、だいたい何拍目か分からない気持ち悪いリズムになります(私はなりました)。フィルやおかずは、1曲通して打ち込めるようになってからで間に合います。
音源はDAW付属のドラムキットで問題ありません。まずは「1・3にキック、2・4にスネア」が体に入っていれば、どの方法でも曲になります。
ベース:コードのルート音を、8ビートで鳴らす
ベースも付属音源でOKです。最初のルールもシンプルです。
そのとき鳴っているコードのいちばん低い音(ルート音)を、8分音符で刻む。
Cのコードなら「ド」を8分で8回、Fに変わったら「ファ」を8回。これだけで、コードとリズムがつながって「演奏している」状態になります。
それすら面倒だったら、全音符でベースを鳴らしておくだけでもいいでしょう。
私の1曲目も、ベースはこのルート8分だけでした。そのあといろいろ調べて、少しずつ動きを足しています。いま私がよく使うのは、
- ルートと5度を行き来する
- コードが変わる直前に、次の音へ半音(クロマティック)で近づく
- あとは基本、コードの構成音に沿って動かす
くらいのシンプルなものです。凝ったことをしなくても、これで十分ベースになります。
順番としては、まずルート8分で1曲通すのが先です。味付けはそのあとで足りました。
とりあえず1曲作ると、本当に世界が変わる
ここまでをまとめると、1曲目に必要なのはこれだけです。
- DAW(Macなら GarageBand で可)と、その付属音源
- コード … 王道進行を調べて打ち込む。どうしても分からなければ Scaler 3
- ドラム … キック1・3、スネア2・4を崩さない(Logicなら Drummer に任せて、音だけ差し替えてもいい)
- ベース … コードのルートを8分で
これで一応、「曲」になります。派手さはありません。でも完成した曲が1つある状態は、0曲の状態とはまったく違います。
私は長いあいだ足踏みしていましたが、いま振り返ると、止まっていた時間のほとんどは「いい機材を探していた時間」でした。
実際に前に進んだのは、あるものだけで1曲作りきると決めてからです。
そして1曲できあがったとき、思っていたよりちゃんと「曲」に聞こえたんです。
「これなら誰でも作れるじゃん」と本気で思いました。
そこからはひたすら作りました。いちばん多かった時期は、毎週1曲、歌なしのインスト曲を上げていた。
とにかく面白かったです。この「面白い」に入れるかどうかが、たぶん最初のいちばん大きい壁だと思います。
今でもボカロを作っていますが、やっぱり面白い。音楽は好きに試せるのがいいところで、最近はロクリアンやハーフディミニッシュみたいな、少し外れたスケールやコードでも遊んでいます。最初はそんなの知らなくても、まったく問題ありません。
ただし「作る」と「バズる」は別の話
正直に書くと、曲を1つ作ること自体は、そんなに難しくありません。この記事のとおりにやれば、たぶん作れます。
難しいのはその先、作った曲を聴いてもらうことです。ここは機材や打ち込みの話ではなく、まったく別のテーマになるので、別の記事で書きます。
まずは1曲。買い物はそのあとで十分です。どの音源から揃えていくか、みたいな話も、1曲作ってからのほうが判断できるので、これも別で書こうと思います。
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