今回も初心者ボカロP向けに書いていきます。
結論から書くと、サチュレーション(倍音を足して音を太くする処理)も、Logic を使っているならまず純正の ChromaGlow で十分です。
私はいま Logic純正 ChromaGlow → RC-20 Retro Color → iZotope Trash の3つを、目的で使い分けています。
純正で足りるのに、なぜ2つ買い足したのか、順番に書きます。
そもそも何のためにサチュレーションを使うのか
私がサチュレーションを本格的に使い始めたのは2026年に入ってからです。
きっかけは、ボカロの声が細くて前に出てこないことでした。
コンプの記事 に書いたとおり、私は一度、ボーカルに無料の 1176 をレシオ決め打ちでかけて、声をペラペラにした失敗があります。
あれ以来、コンプで無理に前に出すのはやめました。
そのうえで気づいたのが、コンプで強く潰してはいけない音があるということです。
ストリングスや木管のような、強弱そのものが表情になっている音は、コンプで平坦にすると生っぽさが消えます。かといって薄いままだと埋もれる。
そこで 倍音を足して、音そのものの密度を上げるほうに切り替えました。
潰さずに前に出す、という感じです。
ボカロの声もこれで、だいぶ扱いやすくなりました。
ちなみに私は UAD の 610-B(真空管プリのプラグイン)も持っているのですが、これは私にはキャラが強すぎて、通すと音が変わりすぎて不快でした。
もっと素直に倍音だけ足したい、というのが ChromaGlow を使い始めた動機です。
① Logic純正 ChromaGlow(まずはこれで十分)
ChromaGlow は Logic Pro 11 で追加された純正のサチュレーションです(2026年時点、Apple公式の解説)。
つまみはシンプルで、
- Model … Retro Tube / Modern Tube / Magnetic / Squeeze / Analog Preamp の5種類。歪みの「素性」が変わります
- Style … 各モデルに Clean と Colorful。Colorful のほうが倍音が濃い
- Drive … どれだけ突っ込むか
- Mix … かけた音と原音の混ぜ具合
- Bypass Below … この周波数から下はサチュレーションをかけない(低域が濁らない)
私は Model を Modern Tube にすることが多いです。
たまに Retro Tube。強めにしたいときは Style を Colorful、控えめにしたいときは Clean にします。
Drive は入れすぎず、Mix で薄める、という使い方です。

トラックに挿した例です。
良かったのは、コンプでは前に出せなかった音が、倍音を足すと自然に前に出てくることです。
純正なので追加費用ゼロ、動作も軽い。いまはボカロだけでなく、いろいろなトラックにうっすら使っています。
かける強さはトラックによってばらばらです。
物足りないのは、ChromaGlow でできるのは基本的に倍音付加で、音色そのものはそこまで大きく変わらないところです。
もっと歪ませたい、キャラを変えたい、というときは弱く感じます。
正直、私もまだ5モデルの違いを説明できるほどは理解できていません。
② RC-20 Retro Color(雰囲気を出す・ゆらす)
RC-20 Retro Color(XLN Audio)は、作曲を始めてわりとすぐに買ったプラグインです。
当時はインスト曲を作っていて、lo-fi っぽい質感が手軽に出せるのが気に入っていました。
6つのモジュールで音を汚したり色を付けたりできます。
- NOISE … レコードノイズやヒスノイズを足す
- WOBBLE … テープのようなピッチのゆれ
- DISTORT … 歪み・サチュレーション
- DIGITAL … ビットクラッシャー(デジタルに劣化させる)
- SPACE … 短いリバーブ
- MAGNETIC … テープの摩耗・ドロップアウト
プリセットも大量にあります。ピアノには Sad Pianoをよく使います。

こちらはプリセットのVinyl 1です。

ゆらしたい音、雰囲気を出したい音に向いています。
私はピアノやボーカルに使うことが多いです。
ボカロのボーカルは DIGITAL を軽く入れると、打ち込みっぽさが少し抜けて「ありそうな声」に寄る感じがします。ボカロとは相性がいいと思います。
失敗談もあります。初期の曲は、明らかに RC-20 をかけすぎていました。
ゆれも lo-fi 感も、聞けばすぐ「エフェクトかけてるな」と分かるくらい強かった。
あとで聞き返すと、そこが気になって曲に集中できません。
いまは 言われないと気づかないくらいに抑えています。
RC-20 は分かりやすく効くぶん、かけすぎやすいプラグインだと思います。
価格は2026年時点で通常99ドル前後、セールで39〜59ドルまで下がっているのを何度か見ました(XLN Audio 公式 / Plugin Boutique)。急がないならセールを待っていい価格帯です。
③ iZotope Trash(しっかり歪ませたいとき)
iZotope Trash は、2024年に復活したマルチバンドのディストーションです。最大4つの帯域に分けて、帯域ごとに別の歪みや畳み込み(IR)をかけられます。
機能を絞った無料版の Trash Lite があるので、まずは無料で試せます。有料版は2026年時点で通常99ドル前後です(iZotope公式 / Plugin Boutique)。
私はギター、ベース、キックやスネアに、わりとガッツリかける用途で使っています。

ベースが分かりやすい例です。
帯域を分けられるので、低いところは土台として残しつつ、その上だけを歪ませて存在感を出す、という調整ができます。ベースにはこれがちょうど良かったです。
ボーカルにも使えますが、色付け程度です。
Trash にはボーカル用のプリセット群もあって、そこから選んで Mix を戻して使います。
強くかけると、すぐ耳が痛くなります。

Trash の限界も感じています。
当時は「良い」と思ってかけていた歪みが、あとから聞くと歪みすぎで、耳が痛い曲がいくつかあります。
Trash は攻めた歪みは得意ですが、上品に倍音を足す用途にはキャラが荒い。
そこは正直 FabFilter Saturn(Saturn 2)が欲しいと思っているところです。
EQ の Pro-Q、コンプの Pro-C 3、リバーブの Pro-R 2 と揃えてきたので、サチュレーションも同じ流れで、と考えています。まだ買っていません。
使い分け(いまのところ)
- 倍音を足して前に出したい(ボカロ、細いシンセ、コンプを強くかけられない楽器)… Logic純正 ChromaGlow。まずこれで足りる
- 雰囲気・ゆれ・lo-fi 感がほしい(ピアノ、ボーカル)… RC-20 Retro Color。ただし「気づかれない量」で
- しっかり歪ませたい・帯域で分けたい(ギター、ベース、ドラム)… iZotope Trash。無料の Trash Lite から試せる
- もっと素直で上品なサチュがほしくなったら … FabFilter Saturn(私はこれから)
いま初心者ボカロPに聞かれたら
Logic Pro 11 を持っているなら、サチュレーションは ChromaGlow だけで当分足ります。
倍音を足して音を太くする、前に出す、という目的はこれでほぼ済みます。
買い足すとしても、目的がはっきりしてからでいいと思います。
私の場合は「lo-fi の雰囲気がほしい」で RC-20、「ギターやベースを積極的に歪ませたい」で Trash、という順でした。
そして、かけすぎには気をつけてください。サチュレーションもディストーションも、かけている最中は気持ちよくて、あとで聞くとやりすぎになりがちです。私はこれで何曲か作り直しています。
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