今回も初心者ボカロP向けに書いていきます。
先に結論から書くと、マキシマイザー(音を大きくするプラグイン)は、初心者のうちは専用のものを買わなくていいです。
Logic純正の Limiter で十分ですし、そもそも「音圧が足りない」と感じる原因は、マキシマイザーより手前にあることがほとんどでした。
私は Logic純正 Limiter / Adaptive Limiter → iZotope Ozone(Advanced) と使ってきて、いまは Ozone の Maximizer で音圧を上げています。
ただ、効いたのは Ozone そのものより、その前にやった2つのことでした。順番に書きます。
そもそもマキシマイザー(リミッター)は何をするもの?
ざっくり言うと、天井(Ceiling)を決めて、そこに当たる手前まで全体の音量を持ち上げるプラグインです。
フェーダーで音量を上げると、ピークが 0 を超えて音が割れます。マキシマイザーは「この天井は超えさせない」と決めたうえで、その範囲でめいっぱい大きくしてくれる。だから上げても割れない。ここがフェーダーとの違いです。
代わりに、大きい音と小さい音の差(ダイナミクス)は減っていきます。
上げれば上げるほど、のっぺりした音になります。
最初はLogic純正のLimiterだった
ボカロ曲を作りはじめた頃、使っていたのは純正の Limiter(と Adaptive Limiter)でした。
正直に言うと、最初は何が起きているのか分かりませんでした。
- Gain を上げると音は大きくなる。でも「それならフェーダーで上げるのと何が違うの?」
- 音割れもピンとこない。フェーダーが赤くなっても、スピーカーからは普通に鳴っている。聞きにくくはなるけれど、「割れた」という感じがしない
いまなら「フェーダーの赤 = ピークが天井を超えている状態で、Limiter はそこを叩いて潰している」と分かりますが、当時は音が大きくなって、ダイナミクスが減っただけという印象で終わっていました。

Logic純正の Limiter。つまみは少なくて、Gain を上げたぶんだけ大きくなり、Output Level(天井)は -1.0 dB。シンプルなのに、最初はこの画面で何を見ればいいのか分かりませんでした。
プロと比べて自分の曲が貧弱で、Ozoneを買った
そのあと、自分の曲を人の曲と並べて聞くと、明らかに音が細いのが気になりました。
音量だけの話ではなく、痩せている感じ。低い帯域の要らないところを切っていなかったのも、あとから思えば効いていました。
当時読んだブログに「Ozone の Advanced を買うだけで曲が良くなる」と書いてあって、それを信じて買いました。
結論から言うと、それは違いました。買っても曲は良くなりません。
ただ、無駄だったかというとそうでもなくて、「マスタリングって何をやるのか」の全体像はこれで掴めました。
EQ で整えて、コンプで密度を出して、最後にマキシマイザーで持ち上げる、という流れが体で分かった。
そこは収穫でした。
ただし、Ozoneは毎回自動で最適化してくれるのですが、ほぼ毎回同じモジュールを使うだけなので、そこは注意ですね。ほぼ同じことをやっていて、値だけ微妙に違う。つまり、毎回最適なモジュールを使ってくれるわけではない。

iZotope Ozone 11 Advanced。
上記画像のように、モジュールをいくつも重ねてマスターにかけます。買っただけで曲が良くなることはありませんでしたが、マスタリングで何をするのかを知るには良い教材でした。
効いたのはマキシマイザーより「手前の2つ」
いま音圧で困らなくなったのは、Maximizer のつまみを追い込んだからではなく、その前にやった2つが大きいです。
1. 2mixの音量を下げて、余裕をつくる
マスタリングに回す前の 2mix の段階で、ピークを -5 dB くらいに抑えておきます。天井まで詰まった状態で渡すと、マキシマイザーで持ち上げる余地がありません。Ceiling を開けておくイメージです。これだけで、最終的な音の質がかなり変わりました。
2. 25Hz以下を切る
低い帯域の、耳では聞こえないのにエネルギーだけ食っている部分を、無料EQの記事でも使っている FabFilter Pro-Q 4 をマスター(Stereo Out)に挿してカットします。目安は 25Hz 以下。これはあくまで目安なので、場合によっては上下させます。
ここを切ると、マキシマイザーが無駄な低音を持ち上げなくなるので、効きがきれいになって、体感の音圧も上がりました。

Stereo Out に挿した Pro-Q 4。いちばん左を急な坂にして 25Hz 以下を落としています。
そのうえで、Ozone の Maximizer で持ち上げます。

Ozone の Maximizer。
Gain を上げるとそのぶん全体が持ち上がり、Output(天井)の -1 dB は超えません。
やっていることは純正 Limiter と同じで、こちらは IRCや Soft Clip など選べる項目が多いだけです。
私は IRC 4 – Modern、Character は Fast and Loud にして、あとは耳で「これ以上は苦しい」というところまでやっています。ここはOzoneが提案してくれるので、そのままなことも多い。
メーターは無料でもらえたもので測っている
音圧は耳だけだと途中で分からなくなるので、メーターも見ます。
私が使っているのは、ほとんどが無料で配られたときにもらったものです。
- Tonal Balance Control(iZotope)… 帯域のバランスが目安の枠に収まっているか
- Insight 2(iZotope)… ラウドネス(LUFS)と True Peak の確認
- 昔は T-RackS 5 のメーター(IK のバンドルに付いてきた)
Insight 2 で見ると、下の画像くらい(Integrated -13.9 LUFS、True Peak -1.8 dB)で書き出しています。ABメロが大体このぐらいですね。
配信は -14 LUFS 前後がよく目安にされます(2026年時点)。
ただ数字を合わせにいくというより、-14 くらいを見ながら、あとは耳で気持ちいいところで止めています。
サビは、-8から-10LUFSぐらいになりますね。

Insight 2 のラウドネスメーター。
Integrated(曲全体の平均)が -13.9 LUFS、True Peak -1.8 dB。
いちばんの失敗は、Ozoneを買う前にやることがあったこと
振り返ると、ボカロを作りはじめた頃に「音が小さい」と悩んでいたのは、マキシマイザーの問題ではなく、ミックスが下手だっただけでした。
あの時期に Ozone を買う必要はなかったです。
具体的にはこんな状態でした。
- キックとベースが土台になっておらず、全部の音が同じくらいデカい
- ハイハットやライドが大きすぎて、うるさい
- ピアノも前に出すぎ
- ボーカルまわりの中域がごちゃついて、肝心のボーカルが埋もれる
この状態のままマキシマイザーで持ち上げても、うるさいだけの曲になります。音圧が上がったように聞こえても、聞いていて疲れる音です。
先にコンプの記事やサチュレーションの記事でやっているような、各トラックの整理をしてからのほうが、結果的に音圧も出ます。
いま初心者ボカロPに聞かれたら
マキシマイザーは、まず Logic純正の Limiter で十分です。
専用のものを買う必要はありません。ここら辺の主張は一貫しております。
「音圧が足りない」と感じたら、先に
- 2mix の音量を少し下げて余裕をつくる(-5 dB くらい)
- マスターで 25Hz 以下を切る
- そもそも各トラックのバランスを見直す(キック・ベースを土台に、うるさい帯域を下げる)
を試したほうが、たぶん効きます。
Ozone は、「マスタリングで何をやるのか」を知る教材としては良かったです。でも買えば曲が良くなる魔法ではありません。買うとしても、ミックスが一通り自分でできるようになってからで遅くないです。
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