今回も初心者ボカロP向けに書いていきます。
EQ・コンプ・サチュレーション・リバーブ・音圧は、それぞれ別の記事に分けて書いてきました。
この記事は、その1個ずつを 1本のボーカルにどう並べているか、という順番の話をします。
結論から書くと、ボーカルのチェーンはいま9個まで増えていますが、全部いっぺんに有料にしたわけではありません。
純正だけでもチェーンは最後まで組めます。
私は純正で組んでから、詰まったところだけを1個ずつ置き換えてきました。
前提:私はボカロP、ボーカルは書き出したwav
私は歌を録りません。
ボーカルは Synthesizer V 2 と VOCALOID6 で作って、書き出したwavをミックスしています。
なので、生歌向けの解説とは少しズレます。
とくにノイズ処理とピッチ補正のあつかいが違うかと思います。
そこは読みながら差し引いてください。
いまのボーカルチェーン(挿している順)

上から順に、こうなっています。
- iZotope VEA … 下ごしらえ。ノイズやレベルのばらつきを軽くならす
- Waves Vocal Rider … 音量の自動ライド。手で音量を書く作業の代わり
- FabFilter Pro-Q 4(1枚目) … 要らない帯域を削る補正のためのEQ
- FabFilter Pro-C 3 … コンプ。音量の粒をそろえる
- SpecCraft … サ行と、耳につく共鳴をピンポイントで抑える
- Logic純正 ChromaGlow … サチュレーション。倍音を足して質感を出す
- FabFilter Pro-Q 4(2枚目) … 質感の最終調整。1枚目とは削る場所が違う
- ディレイ/リバーブ … インサートではなくセンドで送る
- Three-Body Technology VO-TT … 最後に全体を整えて前に出す
ディレイとリバーブはトラックに挿さず、センド(バス送り)にしています。
理由はリバーブの記事に書いたとおりで、昔センドを知らずに素がけして音を濁らせた失敗があるからです。
純正だけのプラグイン

Logic だけで組むと、こうなります。
- Channel EQ … 要らない帯域を削る
- Compressor … 音量の粒をそろえる
- DeEsser 2 … サ行を抑える
- ChromaGlow … 倍音を足す
- (必要なら Flex Pitch で音程を直す)
これで一応チェーンとしては完成します。私も最初はこんな感じでやっていました。
ChromaGlow は画像だと Model が Modern Tube、Style が Colorful、Drive 31%、Mix 21%、ぐらいです。
低いところにサチュレーションがかからないようにして、上だけ倍音を足しています。詳しくはサチュレーションの記事に書きました。
物足りなくなった場所は、記事ごとに分けて書いています。
- EQ … 純正 Channel EQ で足りなくなって FabFilter Pro-Q へ
- コンプ … 純正 Compressor と無料 1176 でつまずいて FabFilter Pro-C 3 へ
- リバーブ … 純正 ChromaVerb が重くて Valhalla VintageVerb・FabFilter Pro-R 2 へ
- 音圧 … 純正 Limiter が分からず iZotope Ozone へ(結局は手前のミックスの問題でした)
有料に切り替えた場所(順番と理由)
EQ・コンプ・リバーブは、上のとおり別記事のとおりです。
買った順も Pro-Q4 → Pro-C 3 → Pro-R 2 でした。
そのあと、ボーカル専用で足したのが3つあります。
Waves Vocal Rider(手作業の時短)
それまで私は、いわゆる手コンプをしていました。
クリップゲインとオートメーションで、一言ずつ音量を書いていく作業です。
正直、質は手でやったほうが良くなります。でも時間がかかりすぎる。1曲のボーカルで何時間も溶けます。
Vocal Rider は音量を自動でならしてくれるので、これを入れて手コンプはやめました。
ただし、ボカコレのように本気で狙う曲では、いまも手で音量を書いています。ここぞという曲は、時間をかける価値があると思っています。
価格は2026年時点で通常40ドル弱、セールで30ドル前後です(Waves公式。Waves直販のみ)。
安いので買ってしまいました。
SpecCraft(ディエッサーの行き着き先)

ディエッサーは、けっこう回り道をしました。
Logic の DeEsser 2 → Pro-Q 4 のディエッサー用プリセット → たまに Pro-C 3 のディエッサー機能 → いまの SpecCraft です。
SpecCraft(Three-Body Technology)は、もともとは共鳴を抑えるプラグインで、De-Esser モードに切り替えるとディエッサーとして使えます。
良かったのは、サ行だけでなく 「その曲でだけ耳に刺さる帯域」 を動的に見つけて抑えてくれるところです。ボカロだと調声のクセで、曲ごとに刺さる場所が変わります。そこを固定のディエッサーで追うのがしんどかったですね。
価格は2026年時点で149ドルです(Three-Body Technology公式 / Plugin Boutique)。ここは正直、無料や純正で粘れる部分なので、急がなくていいと思います。
VO-TT(最後に前に出す)
チェーンを全部通しても、まだボーカルが前に出てこない、曲に馴染まない、ということがありました。
きっかけは、単純に 再生数が伸びなかったことです。
いろいろ聞き返して、原因はボーカルだと思いました。ボカロ曲は声が主役なので、そこが弱いと全部弱く聞こえます。
VO-TT(Three-Body Technology)は、名前のとおりボーカル版の OTT です。5つの帯域それぞれにアップ/ダウンのコンプがかかって、少ない操作で音のバランスがそろいます。
私は Warm1 というプリセットを、Amount を低めにして使っています。強くかけると不自然になるので、薄く。
これを通すと、ボーカルが自然になって、前に出てくる感じがします。
価格は2026年時点で通常29ドル(セール価格19ドル)です(Three-Body Technology公式 / Plugin Boutique)。
VEA(無料でもらった下ごしらえ)
先頭の VEA(iZotope)は、2026年7月の iZotope Japan の無料配布でもらいました(通常29ドル、iZotope公式)。
ボカロの書き出しwavにも、よく聞くと細かいノイズやレベルのばらつきがあります。
VEA をチェーンの先頭に置いて、そこを軽くならしてから本番の処理に入る、という使い方です。
あくまで下ごしらえで、強くはかけません。
Pro-Q 4 はボーカルにこう描いている

1枚目の Pro-Q 4 は、「Forward Controlled Vocal」というプリセットから始めています。
やっていることはシンプルで、低いところをローカットして、こもる帯域と刺さる帯域を何か所か削っています。
一部はダイナミックEQにして、その音が出たときだけ削れるようにしてありますね。
今までのつまずきは、だいたい「やりすぎ」
チェーンで失敗したことは、振り返るとほぼ「やりすぎ」でした。
- 1176 のかけすぎ … レシオ決め打ちでボーカルに強くかけて、声をペラペラにしました(コンプの記事)
- リバーブの素がけ … センドでダッキングせず、そのままかけて音を濁らせました(リバーブの記事)
- 調声せずに書き出した … Synthesizer V 2 や VOCALOID6 で、ほぼベタ打ちのまま書き出して、ミックスで何とかしようとしていました
最後のが、いちばん効きました。
音程・タイミング・強弱・ビブラートを 書き出す前に詰めておくと、そのあとのプラグインは全部軽く済みます。
逆にベタ打ちのままだと、EQ もコンプもディエッサーも無理をすることになります。
ピッチ補正についても書いておきます。
初期は Logic の Flex Pitch で音程を直していました。
でもボカロはそもそもそこまでズレないし、しゃくりやわざとのズレを消すと、かえって不自然になりました。
いまはピッチ補正はほとんどやっていません。
直すより、書き出す前の調声で作り込むほうに時間を使っています。時間があれば、もちろん全てやりたいですが。
いま初心者ボカロPに聞かれたら
ボーカルのチェーンは、純正だけで最後まで組めます。Channel EQ、Compressor、DeEsser 2、ChromaGlow で十分に形になります。
そのうえで、私がボーカル専用に最初に足すとしたら、
- 音量を書くのに時間がかかりすぎるなら Vocal Rider(時短。質は手のほうが上)
- サ行や共鳴が曲ごとに暴れて追いきれないなら SpecCraft(ただし急がなくていい)
の順で考えると思います。基本プラグインは、時間を買っているのかなと。中学生とかでお金がないなら、お金をかけずにやる。30歳以上で時間がないなら、プラグインで時間を買う感じでしょうか。
VO-TT はもっと後、「ボーカルが前に出ない」と本気で悩んでからで間に合います。
そして、どのプラグインも かけすぎに注意してください。
かけている最中は気持ちよくて、あとで聞くとやりすぎ、というのを私は何度もやっています。1年前に作った曲とかを聴くと、今の方が成長しているので、やり過ぎに感じますね。
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