最後まで曲を完成させられない。
やっと完成しても、誰にも聴かれない。
ボカロPを始めたばかりの人なら、一度はこの壁にぶつかったことがあるんじゃないかと思います。
私は、その壁を越える手段としてAI作曲をもっと使っていいと思っています。
特に、始めたばかりの人ほどです。
今回はその理由を、リスクの部分も含めて正直に書きます。
「心がこもってない」は、DTMも通ってきた道
AI作曲というと、抵抗がある人も多いと思います。
正直、私自身もそうです(前回の記事で書いた通り、今のところ自分では使っていません)。
ただ、似たような拒否反応は、DTMそのものも昔味わっているというのはよく言われる話です。
シンセサイザーや打ち込みが出てきた頃、「機械が作った音楽には心がこもっていない」と言われていた時代があったそうです。
今ではDTMは当たり前の制作手段ですし、この記事を読んでいる方もほとんどDTMで曲を作っているはずです。
AI作曲も、今は同じ入り口に立っているだけなんじゃないかと思っています。
「AIが作った曲には魂がない」という声は、たぶんこの先も出続けます。
それでも、道具として定着していく流れそのものは止まらない気がしています。
業界側もすでにAI作曲を後押ししている
これは私の感覚だけの話ではありません。
初音ミクを開発しているクリプトン・フューチャー・メディアが運営する音楽ソフト販売サイト「SONICWIRE」で、「AI作曲プラクティス講座」という受講企画が実際に開催されています。
音楽経験はあるけれど一人で曲を完成させられなかった、という方が受講したインタビュー記事を見つけました。
その方は「ChatGPT」で歌詞を、「Suno」で曲そのものを作り、初めて一人で曲を完成させられたと語っています。(SONICWIREブログより)
初音ミクを作っている会社自らが、AI作曲を学ぶ講座を主催している。
ボカロ文化の中心にいる企業が、もうAIを敵扱いしていないということだと思います。
また、YouTubeなどを見ると、プロが初心者はAIを使えみたいな動画を見る事があります。
おそらくですが、プロはコンペなどで、毎週7曲ぐらい作る必要があり、それを踏まえての事でしょうが、それでもプロも積極的に奨励しているように感じます。
どの動画か忘れましたが、山口一郎さんも、AIの使う方向で話をされていたと思います。
その際の話は、Suno AIと、マスタリング的なAIの話が混合されていたとは思いますが(どの動画か忘れたのですが、下記動画じゃないかも)。
ちなみに私は、Scaler 3というコード作成プラグインを使い、さらにその中のmidiを基本に1曲目を完成させました。
AIではありませんが、最初の作曲ではやっていることは同じような感じかもしれません。
また、以前の記事でも触れましたが、2026年冬のボカこれREMIX部門では、AI(Suno)で作られたとみられる曲が1位を取っています(詳しくは前回の記事)。

賛否はありましたが、ボカロPこそ積極的にAIを使うべきという声も上がっていました。
というのも、視聴者にとってAIを使ったか、使っていないかは関係ないです。
コメントにもありましたが、いい曲ならなんでもいいというのが、リスナーの答えだと思います(もちろん著作権の問題とかありますがリスナーには関係ない)。
時代は、思っているより先に進んでいる気がします。
なぜ初心者ほど恩恵が大きいのか
ここが一番言いたいところです。
作曲を何年もやっている人にとって、AIは自分の作風を薄める道具に見えることもあると思います。
実際、私自身がそうです。
しかし、まだ一曲も完成させたことがない人にとっては、話がまったく違います。
コード進行も分からない、アレンジもできない、そもそも何から手をつければいいか分からない。
そういう状態でずっと止まっているより、AIで一曲でも「形」にする経験をする方が、圧倒的に前に進めます。

一度でも「曲が完成した」という感覚を味わうと、次に自分で作るときのハードルも下がります。
これは、独学でゼロから全部やろうとするより、はるかに挫折しにくいやり方だと思っています。
「作曲がしたい」のか「成功したい」のか
ここで一度、自分に問いかけてほしいことがあります。
自分は「作曲そのものが好きだからやっている」のか、それとも「ボカロで成功したい・稼ぎたい」のか、という部分です。
前者なら、AIに任せてしまうと、続ける理由自体が薄くなってしまう可能性があります(この感覚は前回の記事にも書きました)。
しかし後者のボカロP、つまり「作る過程より結果(再生数・認知)が欲しい」なら、AIを使わない理由はあまりないと思っています。
再生数を伸ばす、名前を知ってもらう、という目的だけを見るなら、手段にこだわる必要はないはずです。
さらに言うと、AI作曲をする人が増えれば増えるほど、DTM市場そのものが広がります。
今まで作曲したいけどできなかった人が流入するので。そして、例えば、100人AI作曲をしたら、1人以上は少なくともプラグインなどを買って、自作作曲をするはずです。
市場が広がれば、プラグインメーカーも儲かり、新しいプラグインの開発にもお金が回ります。
回り回って、今DTMをやっている人たちにも恩恵があるというのが、個人的な見立てです。
これは斜陽のジャンルほどよく言われることです。
DTMは斜陽ではありませんが、それでも人口が増える方に進むのは間違いないでしょう。
すべての人がAIだけで音楽を完結できるわけではないので、結局は人の手を通ったプラグインや音源の需要もなくならないとは思っています。
著作権とパクリ、開示すれば全部解決するわけではない
ここは誤解してほしくないので、はっきり分けて書きます。
「AIで作りました」と最初から明示しておけば、仮にメロディが誰かと似てしまっても、視聴者の心証はかなり変わります。
黙っていて後から似ていると指摘されるより、最初から言っておく方が、印象としては圧倒的にマシだとは思っております。
ただし、開示すれば著作権リスクそのものが消えるわけではありません。
TuneCoreのようなサブスク配信サービスでAI生成曲を扱うと、著作権が実質手放しに近い扱いになる、という話は前回の記事に詳しく書きました。

これは開示の有無とは別問題として、そのまま残ります。
それと、もう一つ言えることがあります。
メロディが他人と被るリスクは、そもそもAIを使わなくても存在します。
作曲は、コード進行の上にメロディを乗せる以上、構造的に似てしまう瞬間が生まれやすいものです。
実際、プロの作曲家同士でも、無意識のうちに他の曲と似てしまったと報じられた例があります(パクリと言われる問題については以前まとめました)。
AIだから特別危険、というより、作曲という行為そのものにもとから付きまとうリスクだと捉えた方が、実態に近い気がしています。
AIだけで完結できる人は、実はそう多くない
ここまでAI作曲を推す話を書いてきましたが、一つだけ正直に付け加えます。
先ほどのSatsuki Okuda氏のインタビューでは、AIツールによっては「生成されたものをどう発展させればいいか分からず悩んだ」という話も出てきます。
例えば、あるAIツールでMIDIデータだけを生成してもらったものの、そこから先をどう曲として広げればいいのか分からず、使いどころに悩んだそうです。
つまり、「プロンプトを打てば完成品が出てくる」わけではない場面も普通にある、ということです。
以下、SunoAIで作った曲です。しかし、出力して完成ではありません。

そのままだとAIらしくて、すぐ投稿と使えることはほとんどないです。
また、ボカコレもそうですが、そのまま出している曲はAIだと明らかにわかります。
そこは注意点ですね。
隠しているつもりでも、わかってしまいますね。
指摘された人が「隠してたつもりはない、概要欄に書かなかっただけ」と反論することもありますが、書かないということは隠していたと言われてもしょうがないとは思っております。
AI以外にも、人力で低いハードルで曲を形にする方法はあります。
例えばUJAMのようなプラグインは、ギターやベース、ドラムを演奏するスキルがなくても、コードを選ぶだけでそれらしい伴奏を鳴らしてくれます(以前レビューしました)。
AIほど丸ごと作ってくれるわけではありませんが、人力で組み立てる感覚を残しつつ演奏の壁だけを下げてくれるという点で、近い立ち位置だと思っています。
初代AI風味と言ってもいいかもしれません。注意点は、バッキングパターンが同じになってしまうから、多少は変えたほうがいいとは思います。
しかし例えばギターとか、ほぼ似たようなバッキングになってしまうこともあるので、そこは気にしてなくていいかもしれませんが。
AIで一曲完成させる経験をしつつ、少しずつ自分のスキルも伸ばしていくのが、結局は一番遠回りに見えて近道だと思っています。
私自身は今、AIに頼るより、コード進行やアレンジの引き出しを自分の中に増やす方に力を入れています。

実際に使っていたのはこちらのプラグインです。
Scaler 3 を Plugin Boutique で見る →
Sunoの基本的な使い方は、公式チャンネルの解説が分かりやすいです。
まとめ
- 曲を完成させられない・成功したいのに手が止まる、という初心者ほどAI作曲の恩恵は大きい
- DTMも昔「心がこもってない」と言われた時代があった。AIも同じ道をたどる可能性がある。数年後にはメインストリームかもしれない。
- 初音ミクを作るクリプトン自身がAI作曲講座を主催するなど、業界側もすでに後押ししている
- 「作曲がしたい」のか「成功したい」のかで、AIとの向き合い方は変わっていい
- 「AIで作りました」と開示すれば視聴者の心証は守れるが、著作権リスク自体は別問題として残る
- メロディが被るリスクは、AIを使わなくても作曲する以上つきまとうもの
- AIだけで完結できる人ばかりではない。AIで完成体験を積みながら、自分のスキルも伸ばしていくのが現実的
時代の流れとしては、AIの需要はこれからも増えていくはずです。
それを使いこなせるかどうかは別として、食わず嫌いで選択肢から外してしまうのは、もったいないと個人的には思っています。
おそらく5年後とかは、メインストリームになっているかもしれませんね。
そして、今にはない作り方が、世の中を席巻しているかもしれません。
影ぼうさんとかのような、AIで未来を切り拓くアーティストも増えることでしょう。






コメントを残す