2020年から、同じコンプレッサーが何度も無料で配られています。
海外の Bedroom Producers Blog は2026年5月の記事で、Smasher が無料になったことを「2020年までさかのぼって、これまでに4回取り上げた」と書いていました。
Pulsar Audio の Smasher は、通常なら ¥8,540 の FET コンプです。
その製品が、数年おきに0円で配られてきたことになります。
お金を出して買うか、次の配布を待つか。
これが、この1本でいちばん迷うところだと思います。
私の答えは「待つ」でした。
ただ、刺さる人には代えのきかないタイプの製品でもあるので、どういうコンプなのか、誰になら勧められるのかを、確認できた値動きまで含めて並べます。
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1176の「全押し」だけを作ったコンプ
1176 というコンプには、レシオを選ぶボタンが4つ並んでいます。
4・8・12・20 の中から1つ選ぶ、というのが本来の使い方です。
ところが、その4つを同時に押すと回路の動きが変わって、歪んで爆発的に潰れる音になります。
設計者が意図した使い方ではなく、スタジオのエンジニアが見つけたもので、「All buttons in」や「British mode」と呼ばれています。
Smasher は、その状態だけを再現した製品です。
Pulsar は、全押しのときに起きるバイアス電圧の変化まで自社の技術で再現したとしています。

画面を見ると分かるとおり、つまみは INPUT・OUTPUT・MIX の3つだけです。
レシオもアタックもリリースもありません。
入力を上げれば上げるほど潰れて歪み、出力で音量を戻す。
やることはそれだけなので、コンプの設定で迷いようがない作りになっています。

残りひとつの MIX は、潰した音と原音を混ぜるつまみです。
全押しの音をそのまま出すと当然やりすぎになるので、原音に少しだけ足して使うことが前提になっています。
公式が挙げている使い道は、ドラムバス、キック、ルームマイク、ベース、リードボーカル、それにシンセのアルペジオをまとめるとき。
スネアなら、6〜10dB ほど潰した音を原音に数%混ぜる、という具体的な数字も紹介されています。
その「全押し」を、私は使ってきませんでした
正直に書くと、1176 のボタンを全部押すという使い方自体を、私は知りませんでした。
レシオは4つのうちから選ぶものだと思って使っていたからです。

私が持っている 1176 系は、無料配布でもらった UADx 1176 です。
今もドラムとベースには挿しますが、ボーカルには使っていません。
いちばん低いレシオが4からで、歌に対しては強すぎると感じるからです。
レシオを選んで使ってきた私にとっては、4つまとめて押すというやり方自体が初めて知るものでした。
Logic の純正と UADx 1176 を比べた話は、こちらにまとめています。
Logicの1176系コンプは純正のVintage FETで足りる?|ベースとキックに挿していたボカロPが、UADx 1176に替えても差を大きく感じなかった話
では自分ならどこで使うかというと、思いつくのはベースかドラムくらいで、ギターで同じことをして気持ちよくなるのかも分かりません。
使う場面がはっきり見えていない、というのが今の状態です。
公式の動画で聞いた音
ここからは、Pulsar Audio 公式の紹介動画を通しで聞いた印象です。
ドラムやベースに当てた音が、前後で切り替わりながら流れます。
まず思ったのは、よくある昔のヴィンテージな響きだなということでした。
悪い意味ではなく、昔ながらの良き時代、という感じの音です。
そのうえで、前に出ている感じはしっかりします。
潰して前に持ってくる、という目的ははっきり果たしている音でした。

音そのものに文句はありません。
迷うのは、この音が自分の曲のどこで必要になるか、というところです。
5,000円を切っても、私は買いません
同じ Pulsar の 1178 を調べたときは、1万円を超える値段なら高いという結論でした。
Smasher は、その 1178 より元から安い製品です。
それでも、私の答えは変わりませんでした。
5,000円を切っていても、今の私には必要のない1本です。
理由は値段ではなく、コンプで前に出すという発想そのものが、自分のやり方と合っていないからです。
私はどちらかというと、最初から前に出る音の音源を選んだほうが早いと思ってしまう派です。
音を潰して無理やり持ち上げるより、鳴らした時点で前に出ている音源を立ち上げる。
その方が、結果的に早いと感じてしまうタイプです。
同じ会社の FET コンプの見方はPulsar 1178 のセールの記事に、1176 そのものの買い時はUADx 1176 のセールの記事にまとめています。
コンプ全体の待ち方はコンプのセールの記事をどうぞ。
無料配布を待つ、という手がある
この製品が普通のコンプと違うのは、「0円で配られた回」が何度もあることです。
確認できた範囲でも、2023年4月に AudioDeluxe 経由で配られ、2026年5月には公式のアンケートに答えると永続ライセンスがもらえる形で配られています。
冒頭に書いたとおり、Bedroom Producers Blog はこの配布を2020年からたびたび記事にしてきました。
一度きりの企画ではなく、数年おきに繰り返されてきたと考えていいと思います。
実際、私も「無料配布があったのなら、次を待つのもあり」と考えました。
どうしても今日の制作で要る1本ではないからです。
ただし、公式サイトでは現在「無料配布の企画は終了した」と書かれていて、次がいつ来るかは分かりません。
待つつもりなら、公式のニュースレターに登録して告知を待つ形になります。
それでも買う価値がある人
待つという選択は、裏を返せば「今すぐ要らない人」の答えです。
次のどれかに当てはまるなら、金額に見合う1本だと思います。
- お金に余裕があって、1176系のコンプが欲しい人。手持ちに FET 系が1本も無いなら、安く手に入る入口になります
- とにかく前に出したい人。ドラムバスやベースを一段階ぶん荒くして押し出す、という目的がはっきりしている人に向きます
- コンプの数値で止まってしまう人。設定する場所が3つしかないので、アタックやリリースで迷う時間がそもそも生まれません
Plugin Boutique の評価は4.4(7,677件)と、件数がかなり多い部類です。
数年おきに配られてきたことを考えると、持っている人の数そのものが多い製品なのだと思います。

体験版も用意されていて、Apple Silicon は M1 から M5 まで対応しています。
音が好みかどうかは人によって分かれるところなので、気になったら先に自分の曲で鳴らすのが確実です。
過去のセール
確認できたものだけを並べます(ドルの表記は海外の告知記事の金額です)。
- 2023年4月:期間限定で無料配布(Bedroom Producers Blog)
- 2026年2月(3月2日まで):ウィンターセールで $29(通常 $49)(rekkerd)
- 2026年5月:アンケートに答えると永続ライセンスがもらえる形で無料配布(Bedroom Producers Blog)
- 2026年7月(8月19日まで):サマーセールで $29(通常 $49)(rekkerd)
- 2026年10月(10月19日まで):Plugin Boutique で ¥4,980(通常 ¥8,540・41%オフ)
並べてみると、$29(約4割引)が、この製品の定番の下げ幅だと分かります。
10月の41%オフも、その水準と同じくらいの位置でした。
つまり、ここからさらに下を狙うなら「0円の配布」しか残っていない、という珍しい製品でもあります。
半年に一度くらいの割引を取りにいくか、数年に一度の配布に賭けるか、という選び方になります。
Pulsar Audio はほかの製品も年に何度もセールにかける会社で、値動きはPulsar Audio のセールの記事にまとめています。
年末のまとめはブラックフライデーの記事に置いています。
まとめ
Pulsar Smasher は、1176 の全ボタン押しという裏技の音だけを取り出して、つまみ3つにまとめたコンプです。
潰して前に出す、という一点に関してはかなり分かりやすい道具でした。
ただ、1176 をドラムとベースの色付けにしか使ってこなかった私には、全押しの音を常用する場面が見えませんでした。
無料配布が繰り返されてきた製品でもあるので、私は次の配布を待つ側に回ります。
逆に、FET コンプを1本も持っていない人や、音を前に押し出す道具をはっきり欲しいと思っている人なら、安く手に入るうちに拾っておく価値はあると思います。
お金に余裕があって、1176系のコンプでとにかく前に出したい人に。
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アタックやレシオを自分で決められる FET コンプが欲しい人に。
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