音がくり返されるたびに、少しずつにじんで遠ざかっていく。
SSL Native X-Echo の公式動画を見て最初に感じたのは、昔のテープエコーらしい懐かしさでした。
X-Echo は、ミキシングコンソールで知られる Solid State Logic(SSL)が出しているディレイのプラグインです。
60〜70年代のテープエコーの機材をもとに、今のミックスで使いやすい機能を足しています。
X-Echo は持っていないので、ここに書くのは使った感想ではありません。
SSL 公式と Plugin Boutique の説明、公式動画から、中身と向く人をまとめます。
SSL Native X-Echo を Plugin Boutique で見る →
X-Echo はどんなディレイか
テープエコーは、録音用のテープに音を記録して、少し遅れて再生することで「やまびこ」を作る昔の機材です。
テープの揺れや歪み、くり返すたびに音がこもっていく感じが、そのまま音の味になります。

SSL 公式の説明では、テープのやわらかいコンプ感、かすかなノイズ(ヒス)、少しずつ音が劣化していく様子まで再現しています。
そこに、SSL のコンソールらしい歪み(サチュレーション)と、低域・高域の EQ を組み合わせています。
画面の上半分には、元の音(緑)とくり返された音(茶色)が波形で並びます。
どこで音が返ってきているかを目で見られるのは、昔の機材にはない今のプラグインらしいところです。
Mac の M1 にもそのまま対応していて、SSL 公式では14日間の体験版も用意されています。
まずは公式の紹介動画で、どんな音かを聞けます。
4つの再生ヘッドで、返ってくるタイミングを変える
昔のテープエコーには、テープの音を読み取る「再生ヘッド」が複数ついていて、どのヘッドを使うかで返ってくる間隔が変わりました。
X-Echo も、切り替えられる再生ヘッドを4つ持っています。

画面では、ディレイの長さに対して ×1/4・×1/2・×3/4・×1 のボタンが並んでいます。
SSL 公式は、ヘッドを切り替えてエコーに変化をつけられると説明しています。
長さは曲の BPM に合わせる SYNC と、手でたたいて決める TAP のどちらでも決められます。
SYNC を使えば、曲のテンポに合った間隔でエコーが返ってきます。
テープの揺れ、Freeze、Diffusion、ディエッサー
下の段の左側には、テープエコーらしさを作るつまみがまとまっています。

- WOW & FLUTTER:テープを回す機械の揺れと、テープがこすれる感じを再現して、音程をゆらゆらさせる
- FEEDBACK:くり返す回数を決める(上げきると音が止まらずに増えていく「発振」までできる)
- FREEZE と KILL:今鳴っているエコーを止めて鳴らし続ける・すっぱり切る(SSL 公式は盛り上げの「ライザー」と落差の「ドロップ」に使うと説明)
- SATURATION:SSL らしい歪みを足す
- DIFFUSION:新しく作ったリバーブを1つのつまみで足す(かすかな広がりから、谷を埋めるような長い残響まで)
- DE-ESSER:テープエコーで強く出やすい「サ行」の耳に痛い音を抑える
右側には、エコーの広がりと音色を整えるつまみが並びます。

WIDTH でエコーの左右の広がりを決め、TREBLE と BASS で高い音と低い音の量を変えます。
SSL 公式によると、モノラルの音もステレオに広げてくれるそうです。
公式動画を見て感じたこと:つまみが少なく、分かりやすい
X-Echo という名前は、今回調べるまで知りませんでした。
それでも公式動画を見ると、昔の懐かしさをちゃんと感じられるエコーだと思いました。
見た目も SSL らしいデザインです。
つまみの数もそれほど多くないので、何をどう回せばいいかが分かりやすいと感じました。
近いのは Pulsar Echorec、Timeless 3 とは別の方向
同じ昔っぽいディレイとして、前に Pulsar Echorec を調べたことがあります。
X-Echo の見え方は、Echorec のような昔っぽいディレイに近いというのが私の印象です。

Echorec は、深くかかる昔っぽいディレイだと感じた製品です。
詳しくは Pulsar Echorec の記事 に書いています。
一方で、私が欲しいと思っている FabFilter Timeless 3 は、モダンなディレイだと思っています。
今の私のディレイは Logic Pro の純正ですが、もっと細かく時間を決めたいときに物足りなさがあるからです。

同じディレイでも、X-Echo は昔のテープの味を足す道具、Timeless 3 は時間や動きを細かく作り込む道具です。
どちらが上かではなく、向いている方向が違うと考えています。
Timeless 3 の値動きは FabFilter Timeless 3 の記事 にまとめています。
歌声合成の声にかけるなら、ディエッサーは要るか
SSL 公式は、テープエコーではサ行が強く出やすいと説明しています。
そこで、歌声合成の声にディレイをかけるときに、X-Echo のディエッサーが役に立つかも考えてみました。
SSL 公式の動画には、ボーカルにかけた例も入っています。
結論としては、使えるとは思います。
ただ、私自身はディエッサーが入っていることを理由に欲しいとは思いませんでした。
この値段なら、私は買わない
昔の懐かしさは感じましたが、私は X-Echo を買わないと思います。
ディレイを買うなら、欲しいのは Timeless 3 の方です。

X-Echo が向く人・向かない人
向いているのは、昔ながらのテープエコーの響きが好きな人です。
ボーカルやギターに、少しにじんだ懐かしいエコーを足したい人には合うと思います。
SSL 公式の説明どおり、FREEZE や KILL で盛り上げや落差の演出をしたい人にも使い道がありそうです。
反対に、ディレイの時間や動きを細かく作り込みたい人は、モダンなディレイの方が合うと思います。
私のように「純正で物足りないのは細かさ」という人は、Timeless 3 のような方向を先に見た方がいいかもしれません。
ディレイの選び方そのものは、こちらにまとめています。
ほかのディレイと SSL のプラグイン
ディレイでは、16種類を並べる D16 Tekturon と、テープ・アナログ・デジタルの3種類が入った McDSP EC-300 も調べています。
SSL のリバーブなら SSL Native FlexVerb の記事 があります。
SSL のセールの傾向は Solid State Logic のセールの記事 に書いています。
コンプやチャンネルストリップから選ぶなら、SSL のプラグインの選び方 も参考になると思います。
まとめ:昔のテープの味を足すディレイ、私の次の1本は Timeless 3
X-Echo は、60〜70年代のテープエコーの揺れや歪みを、分かりやすいつまみで足せるディレイです。
4つの再生ヘッドや FREEZE、DIFFUSION のリバーブ、ディエッサーまで1台に入っています。
公式動画からは、昔の懐かしさをしっかり感じました。
ただ、私が次に欲しいのはモダンな Timeless 3 なので、X-Echo は見送ります。
昔っぽいエコーが欲しいのか、細かく作り込みたいのかで、選ぶディレイは変わると思います。
昔ながらのテープエコーの、にじんだ響きを足したい人に。
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ディレイの時間や動きを、細かく作り込みたい人に。
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