ボーカルの歯擦音(サ行の刺さりなど)や、ベースの濁った低音など。
こうした「なんとなく気になるけれど、どこが悪いのか分かりにくい」帯域の処理に、私はSpecCraftを使っています。
SpecCraftは、Three-Body Technologyのレゾナンス(共鳴)サプレッサーです。
耳障りな帯域を自動で検出して抑え、削った分はスペクトル補正で自然に埋め戻してくれます。ここが他社製品とは違うところです。
先に正直な結論を書いておくと、導入して音が劇的に変わったとまでは思っていません。
ただ、問題のある帯域を素早く見つけられる点はありがたく、今ではボーカルのディエッサー処理をこれに任せています。
この記事では、購入前後で何が変わったか、便利なところと過度な期待をしない方がいいところを書きます。
購入前は、Pro-Q 4のディエッサープリセットで対応していた
SpecCraftを導入する前は、ディエッサー処理をFabFilter Pro-Q 4のプリセットで行っていました。
Pro-Q 4については、こちらの記事に詳しく書いています。
サ行の刺さりが気になる帯域を、プリセットからある程度当たりをつけて処理する形です。
慣れれば使えるものの、どの帯域がどれくらい出ているかを見た目で把握しづらいのが難点でした。
SpecCraftとは。流すだけでレゾナンスが見えてくる

画面下部にはスペクトラムが表示され、耳障りな共鳴が出ている瞬間に緑色のマーカーが動きます。
SlopeやRatio、Knee、Qといったパラメータで、どのくらいの強さ・範囲で抑えるかを調整する作りです。
右側のCompensation(Dynamics・Formant・Treble)は、共鳴を削ったことで失われる音の厚みや立体感を補う機能です。
削りっぱなしにしない工夫が、このプラグインらしいところだと思います。
他社は削った後の補填はないですね。
ボーカルのディエッサーは、もうPro-Qを使っていない
今、ボーカルのディエッサー処理はSpecCraftに完全に置き換わりました。

画像は「Female Vocal」のプリセットを当てた画面です。
プリセットのカーブに沿って、サ行や耳に刺さる帯域が自動で検出されています。
レゾナンス検出のマーカー表示を見るだけで、どこが問題なのか把握できるのがありがたいです。
以前は耳だけで探っていた作業が、目でも確認できるようになりました。
ベースなど濁りが気になるパートにも使う
SpecCraftを使うのはボーカルだけではありません。
ベースなど、低域の濁りが気になるパートにも使っています。

画像は「Slap Bass」のプリセットを当てたベーストラックです。
低域に出ている不要な共鳴を見つけて、ピンポイントで抑えます。
ベースとかは、プロファイリングで、その音源にあったやつで除去した方がいいかと思いました。
プリセットを見て気づいたこと。ベースは少なく、ドラムは充実
ベース向けのプリセットはほぼなかった
プリセット一覧を眺めていて気づいたのが、ベース向けのプリセットの少なさです。

見ての通り、ベース系は「Slap Bass」くらいしか見当たりません。
De-EsserやDe-shrill Vocalなど、ボーカル系のプリセットが充実しているのとは対照的です。
私は結構、低音のベースが気になっているので、そこは個別に編集して使っていますね。
代わりにドラム向けは充実していた
ベースの代わりに目についたのが、ドラム向けプリセットの多さです。
Drum Bus、Drum Room、Drum Room2と並んでいたので、試しにドラムにも使ってみました。

「Drum Room」のプリセットを当てた画面です。
狙っていたベースではなく、思いがけずドラムのプリセットの豊富さに気づいた、という発見でした。
外部サイドチェインで、検出のきっかけを渡せる
Side Chainで外部信号を入力できる
SpecCraftには外部サイドチェイン入力もあります。

Ext.をオンにすると、別トラックの信号を検出のきっかけとして使えます。
Gainやモード(Left/Right等)も個別に設定できますね。
最近サイドチェイン系は豊富にはなっていますね。
Profilerでリファレンスのスペクトルを取り込む

Profiler機能では、入力した音のスペクトルを解析してプロファイルを作成できます。
自分の音源を直接読み取り問題点を出す、という使い方ができます。
これが選択肢として用意されていること自体はありがたいです。
私は基本、キャプチャーしてからいじることが多いですね。楽なので。
正直に言うと、劇的に音が変わったわけではない
ここまで便利な点を書いてきましたが、正直な感想も書いておきます。
SpecCraftを導入して、仕上がりの音が劇的に変わったとは感じていません。
丁寧に手動でディエッサーやEQを当てていた頃と比べて、別次元の音になったわけではないというのが率直なところです。
だから、問題点を自動で圧倒的に改善してくれるものではないですね。気になっているところを微調整してくれる感じかなと。
それでも使い続けているのは、音を流すだけで問題のある帯域を把握できるという一次的な価値があるからです。レゾナンス検出とマーカー表示のおかげで、耳だけに頼らず「ここが引っかかっている」と目で確認できます。
派手な変化を期待して導入すると肩透かしになるかもしれませんが、問題箇所を早く見つけたい・判断の手間を減らしたい、という人には向いていると思います。
削っている部分もリスニングできるので、そこはありがたいですね。
まとめ:診断のしやすさに価値を感じる人向け
私の場合、SpecCraftの一番の価値は「音を大きく変えること」ではなく「どこが問題か素早く把握できること」でした。
- ボーカルのディエッサーは、Pro-Q 4からSpecCraftに完全移行した
- ベースなど低域の濁りにも使うが、ベース向けプリセットは少ない
- 逆にドラム向けプリセットは充実している
- 外部サイドチェインなど、活用しきれていない機能もまだ残っている
音そのものの劇的な変化より、問題箇所の発見や判断の時短を求めている人には、検討する価値があると思います。
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Three-Body Technology公式のクイックスタートガイド(ボーカル編)でも、実際の操作を確認できます。
セールを待つか迷う場合は、プラグインの年間セールカレンダーも参考にしてください。
ボーカル処理の全体の流れは、こちらの記事にまとめています。







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