キックの音が前に出てこなくて、原因は「位相」ではないかと疑ったことがあります。
いろいろ確かめてみると、位相は問題なかったことがほとんどで、結局いじるのはやめました。
SSL Native X-Phase は、その位相だけを細かく動かすためのプラグインです。
公式の動画を見たうえでの私の結論は、¥17,250 なら、自分はいらないでした。
この記事では、X-Phase がどんな道具かを整理したうえで、打ち込みと歌声合成で作るボカロPに要るのか、Logic Pro に最初からある道具で代わりになるのかを書きます。
SSL Native X-Phase を Plugin Boutique で見る →
X-Phase は、音量を変えずに「波のタイミング」だけをずらす道具
音は波なので、山と谷があります。
位相は、その山と谷がどのタイミングで来るかのことです。
同じ音が2本のトラックで鳴っていて、片方の山ともう片方の谷が重なると、音が打ち消し合って細くなります。
X-Phase は、こうした打ち消し合いを直すために、位相だけを動かすプラグインです。

中心になっているのは、オールパスフィルターと呼ばれる仕組みです。
EQ と違って音量は一切変えず、選んだ周波数のあたりだけ位相を回します。
つまみは、どの周波数で位相を動かすかを決める Hz と、その変化をどれくらいの幅に広げるかを決める Q の2つです。
Second Order のボタンでかかり方の段階を切り替え、Ø のボタンで位相を180度ひっくり返せます。
画面の上には、音全体を少しだけ遅らせるディレイもあります。
単位は秒・ミリ秒・サンプルのほか、マイクの距離に合わせやすいメートルやフィートでも表示できます。

左右のチャンネルは、別々にも、まとめても動かせます。
この画像では、左と右に違う周波数で位相のカーブをかけています。
本来の出番は、マイクを何本も立てて録った音
Plugin Boutique の説明で挙げられている使い道は、ドラムのオーバーヘッド(上から全体を録るマイク)と、太鼓のすぐ近くに立てたマイクを混ぜたときの位相のずれです。
マイクごとに音が届くまでの時間が少しずつ違うので、混ぜると打ち消し合いが起きやすくなります。

公式の画像でも、ベースを直接つないで録った音(DI)と、マイクで録った音の2本のトラックを並べて使っています。
同じ演奏を2つの経路で録ったときこそ、この道具の出番です。
わざと位相をずらした音と元の音を混ぜて、くし状に削れたような響き(コムフィルター)を作る使い方も紹介されています。
ただ、こちらは直す道具というより、音作りのおまけという位置づけです。
キックが前に出ないとき、私が疑った位相は外れだった
音楽制作を始めたころ、キックの音が前に伸びてこなくて困っていました。
原因が位相なのではと思って調べましたが、位相は問題なかったことが多かったです。
あとから振り返ると、本当の原因は低域が濁っていたことでした。
そのときはそれが分からず、低域を EQ でひたすら持ち上げてしまったこともあります。

最近は、キックも EQ で上げるところと下げるところを分けて調整できるようになりました。
そのおかげで、キックが前に出ないと悩むことは、ほとんどなくなりました。
キックとベースの低域をどう整理しているかは、ミックスの低音が足りない・出過ぎるときの直し方に書いています。
EQ そのものは、FabFilter Pro-Q 4 のレビューで使い方をまとめています。
公式の動画を見て感じたこと
位相がずれると音が打ち消し合う、という理屈は分かります。
ただ、動画を見た限りでは、具体的にどれくらい効果があるのかまでは、私には聞き分けきれませんでした。
マイクで録音すると、こうしたずれは実際に起こります。
一方で打ち込みは、同じ音が別のマイクから重なって入ることが少ないので、比較的大丈夫なのでは、と思っています。
それでも、音は波なので、打ち消し合わないようにしておくのは大事だとも感じています。
位相を自由にずらせる道具があること自体には、意味があると思います。
Logic Pro なら、反転だけは Gain でできる
¥17,250 を払う前に、Logic Pro に最初からある Gain プラグインを思い出してください。
Apple の Logic Pro ユーザガイドによると、Gain には左右それぞれの位相を反転するボタンがあります。
モノラルのトラックに挿したときは、反転のボタンは1つだけになります。
ユーザガイドでも、複数のマイクで同時に録ったときの時間のずれに対処する使い方が書かれています。
違いは、Gain の反転は音全体を丸ごと180度ひっくり返すだけという点です。
X-Phase は、周波数を選んで、その周りだけ少しずつ位相を回せます。
私の場合は、いざとなれば Gain の反転で微調整すれば足りるので、X-Phase まではいらないと考えました。
まず反転を試して、それでも直らないほど細かいずれに悩んでから考えても遅くはありません。

打ち込みと歌声合成で作るなら、正直あまりいらない
マイクで録らず、打ち込みと歌声合成だけで作るボカロPには、こういう道具は正直あまりいらないと思います。
同じ音を複数のマイクで録ることがなければ、X-Phase が本領を発揮する場面がほとんど来ないからです。
ただ、作曲をこの先本気で頑張ると決めている人なら、話は変わります。
生の楽器や歌を録るところまで視野に入れるなら、位相まで含めて考えておく必要があるかもしれません。
私自身は、あくまで趣味の範囲から抜け出していないので、そこまではいらないかな、というのが今の考えです。
SSL のほかのプラグインのセールの来かたは、こちらにまとめています。
まとめ:まず EQ と Gain の反転、録音を始めたら X-Phase
SSL Native X-Phase は、音量を変えずに、選んだ周波数のあたりの位相だけを直せる道具です。
出番は、ドラムやベースを複数のマイクで録ったときの打ち消し合いです。
打ち込みと歌声合成で作っている間は、キックが前に出ない悩みも、EQ の整理で直ることがほとんどでした。
位相を疑ったら、まず Logic の Gain で反転を試して、マイクで録る機会が増えてから X-Phase を考えるので十分だと思います。
マイクで録った音の打ち消し合いを、周波数を選んで細かく直したい人に。
SSL Native X-Phase を Plugin Boutique で見る →
キックが前に出ない悩みを、EQ で上げるところと下げるところを分けて直したい人に。
FabFilter Pro-Q 4 を Plugin Boutique で見る →






コメントを残す