今回はボカロの調声について書きます。
「調声 やり方」で検索すると、ポルタメントは何ミリ秒、ビブラートは何ヘルツ、と細かい数値がびっしり出てきます。
昔の私はそれを真に受けて、1音ずつ全部いじっていました。
しかし、今はほとんどいじりません。そのほうが良い歌になりました。
この記事は、SynthV(Synthesizer V Studio 2)と VOCALOID6 を使っている私が、実際にどこだけ触っているか、の話です。
なお、ボーカルの EQ・コンプ・ディエッサーといった「音の処理」は別の話で、ボーカルの処理について に書きました。
この記事は、その前の「ピッチ・タイミング・歌い方の土台を作る」ところです。
どのソフトを選ぶかで迷っている人は VOCALOID6・Synthesizer V・Piapro Studio を実際に使った話 を先に読んでください。
昔の失敗:両極端をやった
最初のころは、ベタ打ち(打ち込んだまま、何も調整しない)で書き出していました。当然、機械っぽい感じ、もしくは面白くない感じでした。
その反動で、次は全部の音を手で直すようになりました。
1フレーズに何時間もかけて、ピッチもビブラートも全ノートいじる。
どちらも良くなかったです。
ベタ打ちは論外として、「全部いじる」ほうも、時間がかかるわりに良くならない。
むしろ、直しすぎて不自然になることのほうが多かったですね。
今の SynthV や VOCALOID6 は、ベタ打ちの時点でピッチがかなり自然です。
そこに手を入れるほど、人間の耳には「作った感」が戻ってくる。
なので今は、触る場所を最初から絞っています。
しゃくり・フォールといった用語は、昔こういう短い解説動画で覚えました(VOCALOID 前提で、Synthesizer V Studio 2 も無かった頃のものです)。
触るのは、この4か所だけ

調声というと全部の音をなめらかにつなぐイメージがありますが、私が実際に手を入れるのは、1フレーズの中でも数か所だけです。
だいたい次の4つです。
- 音の入り方 … フレーズの最初の音。どこから声を立ち上げるか。
- 音の終わり方(上げ方・語尾) … 音を切るのか、伸ばすのか、少し上げて終わるのか。ここで表情がかなり変わります。
- しゃくり … 狙った音より少し下から上がって当てる。入れる場所を選ぶ。全部の音に入れると演歌になります。
- フォール … 音の終わりでスッと下がる。感情が乗るところに少しだけ。基本、サビ中心でいいかと思います。
これ以外の音は、基本さわりません。
真ん中の音をいくら丁寧に直しても、聴いている人はほとんど気づかないからです。
パラメータは少しだけいじる

パラメータも、全部のレーンを触る必要はありません。
私がフレーズの表情のために動かすのは、このあたりです。
- ブレス … 息の成分。増やすと柔らかく、減らすとハッキリする。サビ前を少し上げる程度(歌の内容にもよりますが)。
- エクスプレッション(表現) … 抑揚。フレーズの盛り上がりに合わせて上げ下げ。
- テンション … 声の張り。サビで少し上げる( 曲の構成による)。
- ダイナミクス(ベロシティ) … 音量の起伏。平坦すぎると打ち込み臭くなるので、フレーズの頭から終わりでゆるく動かす。
- ビブラート … 強さは調整の段階で決めます。かけすぎると揺れすぎて不自然になるので控えめに。基本は、サビの伸ばす音(白玉)に軽く乗せるくらいです。
どれも「フレーズの中でゆるく上下させる」くらいで、細かく描き込みません。
ピッチについては、私はピッチカーブを描きません。
ピアノロールで、ノートの音程そのものを動かして直しています。
上に半音ずれて聴こえるならノートを下げる、という直し方です。
カーブで補正するより早いし、やりすぎになりにくい。
ここは人によってやり方が分かれるところだと思います。
Synthesizer V Studio 2の手順
私のメインはSynthesizer V Studio 2の重音テトです。
流れはこうです。

- 声の方向を決める … 右のボイスから、Rock、Cute、Mellow など、曲に合う方向を選びます。ここを先に決めておかないと、後の調整が全部ズレます。サビやABメロで変えます。
- 初期値を決めてから打ち込む … テンションとブレスを、曲全体の基準としてざっくり設定してから歌詞を入れます。ビブラートの強さは、打ち終わってから調整します。
- 音素タイミングを整える … これが実は一番大事だと思っています。打ち込んだら、まず音素タイミングのパネルで、一音ずつ、子音や母音の鳴る位置を少しだけ前後させます(必要に応じて)。大きく動かすというより「この音だけ少し早く」くらいの微調整です。一音ごとの出方(強さ)も、気になるところはここで整えます。これでベタ打ちのもたつきがかなり取れます。
- 打ち終わったら微調整 … テンション、ダイナミクス、ブレス、ビブラートを、フレーズ単位で少しだけ動かす。
- 最後にピッチ … 気になる音だけ、ピアノロールで音程を直す。
AIリテイク(歌い方の候補をいくつか出して選ぶ機能)は、正直あまり使っていません。
適当に決めることが多いし、そこまで大きく変わらないと感じています。
本当は試したほうがいいのだとは思います。
ただ、ダブリング(同じパートを重ねて厚みを出す)を作るときだけは使います。
メインと微妙に歌い方が違う候補を選んで重ねる。
大きく違うのを選ぶと、重ねたときに変になります。
VOCALOID6(初音ミク V6・GUMI)の手順
VOCALOID6 は、プロセカの楽曲公募でキャラ指定があるときに使っています(初音ミク、巡音ルカ)。
ミクも GUMI も AI ボイスです。

流れはSynthesizer V Studio 2とほぼ同じですが、1つ手順が増えます。
- スタイルプリセットで声を選ぶ … 上の STYLE から声の方向を選びます。CHARACTER(COOL↔CUTE)の値で寄せる感じです。
- ベタ打ちのあと、まず発音のタイミングを直す … Synthesizer V Studio 2 でも音素タイミングは触りますが、VOCALOID6 はそのままだと歌い出しがもたついたり食い気味だったりが強く出るので、ここにかける手間が多めです。先にタイミングを詰めて「自然に歌っている」状態にしてから、ほかをいじります。
- しゃくり・フォールを付ける
- エクスプレッションとダイナミクスを調整
GUMI は他のソフトより発音が早いです。
単体だと気にならないのですが、メインとハモリで同じ歌詞を重ねると、GUMI のパートだけ前に出てズレて聴こえる。
ハモリを作るときは、GUMI 側のタイミングを微調整しないと合いません。
VOCALO Changerは使っていません。
ちなみに:テトの音の高さが1オクターブずれて見える
これは調声そのものではないのですが、最初に戸惑ったので書いておきます。
Logic で作ったメロディを SynthV のテトに持っていくと、音の高さの表示が1オクターブ上になります。
Logic で C3 と表示されていた音が、SynthV では C4 と表示される。
これは音がずれているわけではありません。
真ん中のドを「C3」と数えるか「C4」と数えるかが、ソフトによって違うだけかと思います。
慣れれば問題ないのですが、最初は「1オクターブ間違えた?」と何度も確認してしまいました。
Synthesizer V Studio 2 側にこの表記を変える設定は、私が探した範囲では見当たりませんでした。ずれて見えるだけで音は合っているので、慣れるしかないと思っています。
調声より先に、効くこと
最後に、調声を頑張る前に見直したほうがいいことを2つ。
キー選び。
キャラクターごとに得意な音域があります。
そこから大きく外れたキーで歌わせると、どれだけ丁寧に調声しても、苦しそうだったり細かったりします。当たり前ですが。
曲のキーを決める段階で、使うキャラの声が気持ちよく鳴る高さに寄せておくほうが、あとが楽です。Synthesizer V Studio 2 は結構上まで出せて、この表記だと C6 近くまでいけます。
そのうえで、調声に時間をかけすぎない。
私の感覚だと、調声で稼げるクオリティより、ミックス と曲そのもので稼げるクオリティのほうがずっと大きいと思います。
ベタ打ちを卒業して、入り・終わり・しゃくり・フォールと、パラメータを少し。
そこまでやったら、次に進んだほうがいいです。
はじめて1曲を作るところは 曲を作ったことがない人が、まず1曲を完成させるまで にまとめています。







コメントを残す