AMI-Polychaosを調べてみた|1音を4声の対位法に変える、作曲研究者が作ったMIDIプラグインの話

Scaler 3 はキーとスケールから、Song Cage の Melody Rack は歌ったメロディから、それぞれコードを作る道具でした。

今回見つけた AMI-Polychaos は、そのどちらとも違う発想のプラグインです。

 

作っているのは Dr. Zoppa(本名 Francisco Colasanto)という、メキシコの作曲家・研究者です。

メキシコ国立自治大学(UNAM)でアルゴリズム作曲の博士研究をしていて、そこで作った「AMIシステム」がこのプラグインの元になっているそうです。開発者の経歴からしてすでに変わっています。

 

まだ使っていません。

気になって調べた段階の記事です。

私は劇伴系が好きなので気になりますね。

 

何をするプラグインなのか

使い方はシンプルで、DAWのトランスポートを走らせた状態で、コードを1つホールドするだけです。す

ると、そのコードが4声の対位法に変換されて鳴り続け、手を離すと止まります。

 

面白いのは中の仕組みで、4つの声部を4つ別々のランダム生成器で作っているわけではありません。

1つのカオス軌道を、4つの「ヘッド」がそれぞれ少しずつ違うタイミングでずらして読むことで4声を作っています。

同じ軌道を時間差で見ているので、バラバラのランダムではなく対位法として声部同士に関連性が保たれる、という理屈のようです。

 

いじれるパラメーターは、声部間のラグ量を決める SPREAD(0にすると全声部が同じタイミングで動くホモフォニーになる)、各声部のユークリッドリズムを回転させて時間的にずらす STAGGER、和音の転回やトーナルな音を選ぶ HARMONY、そして6種類の「カオスマップ」(ロジスティック写像からサイン波まで)と、その速度をサイクルさせる機能です。

 

公式のデモ動画(60秒ほど)を貼っておきます。

開発元の公式サイトは製品スクショを載せていないポートフォリオ的な作りだったので、今回は動画中心で紹介します。

 

Scaler 3やMelody Rackとの違い

Scaler 3 はキーとスケールを選んでコード候補から選ぶトップダウン型、Melody Rack はすでにある旋律からコードを逆算するボトムアップ型でした。

どちらも最終的には「自分の曲に組み込める、確定したコード進行」を目指す道具です。

 

AMI-Polychaos はそもそも方向性が違っていて、音楽理論のルールにもとづいて何かを提案する道具ではなく、カオス数学から生まれる声部を、ノートをホールドしている間じゅう延々と生成し続けます。

曲を完成させるための道具というより、モジュラーシンセのジェネレーティブ・シーケンサーに近いという理解でいます。

狙った進行を組み立てたい場面には向かず、逆に「想定していなかった動き」を素材として拾いたい場面に向いていそうです。

 

使うならどんな場面か

パッド系の和音を1つホールドして、そこから出てくる4声をレコーディングし、使えそうな部分だけ手で拾ってブリッジやイントロの伴奏に仕立てる、という感じの使い方をまず試したくなりました。

ボーカルのメインメロディのように精密にコントロールしたい部分には向かず、あくまで背景のテクスチャーや、行き詰まったときのアイデア出し用だと思います。

 

Mac の Audio Unit MIDIエフェクトとして Logic Pro にそのまま挿せる点も、Logic を使っている身としては気になったポイントです(VST3 版もあり、Ableton Live などでも使えます)。

プラグイン自体は MIDI しか出力しないので、鳴らすには別途インストゥルメントをそのMIDIトラックに立てる必要があります。

 

対応環境・価格(2026年9月時点)

$29(導入価格、2026年10月30日まで。以降は$39)。

30日間のフル機能トライアルがあります。macOS 10.13以降のユニバーサルバイナリ(Intel/Apple Silicon)で、Audio Unit MIDIエフェクト(Logic Pro)と VST3(Ableton Live ほか)に対応。Plugin Boutique の取り扱いは見当たらず、開発者の直販サイトのみのようです。

 

AMI-Polychaos を公式サイトで見る →

 

まとめ

Scaler 3コード進行の記事で書いてきたような「理論から組み立てる」道具とはまったく別の発想で、これはこれで面白そうだと感じました。

ただ、狙った音を出す道具ではなく偶然性込みの素材ジェネレーターなので、常用するというより「行き詰まったときの引き出しの1つ」として使える形ですかね。

 

個人の開発者による製品なので、Plugin Boutiqueの買い方の記事で書いたような「小規模開発元のリスク」も頭には入れておこうと思います。

 

あとは、やっぱりカオス系だと思うので、ボカロの中でも不協和音系、イメージでは柊マグネタイトさんよりの曲の作り方かなと思いました。

私は結構音楽理論的な方法で作っているので、真逆の飛び道具としてはありかなと思いました。

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ABOUTこの記事をかいた人

Logic Pro で音楽制作をしています。インスト曲とボカロ曲を作りながら、DTM・プラグイン・ミックスで実際に試して分かったことを書いています。