コード進行が思いつかなくて、ずっと止まっていた
曲を作りはじめた頃、いちばん困ったのがコード進行でした。
どのコードを、どの順番で置けばいいのか分からない。
とりあえず並べても、なんだか気持ち悪い。
結論から言うと、コード進行はゼロから考えなくていいです。
J-POPでもボカロでも、よく使われる「定番進行」がいくつかあって、それを借りてくれば曲の土台になります。
私も最初は定番をそのまま使っていました。
ただ、そこで一つ引っかかったことがあります。定番進行を借りてきて、そのまま鳴らしても、自分の曲はなぜか安っぽかった。
その原因は、どの進行を選ぶかではなく、コードをどう積むか(ボイシング)でした。
この記事は、王道進行・丸サ進行・小室進行・カノン進行をひととおり使ってみて分かったことと、そこから「わざと複雑にしていく」に舵を切るまでの話です。
コード・ドラム・ベースを持っているDAWの音源だけで1曲を完成させるまでの流れは、まず1曲を完成させるまで に書きました。
こっちは進行そのものの話です。
定番進行は、どれを選んでも気持ちいい
まず、私が実際に自分の曲で使ってきた進行です。
カッコ内はキーがCメジャーのときの一例です。
- 王道進行(F→G→Em→Am) … 「王道」と呼ばれるだけあって、J-POP・アニソン・ボカロで数えきれないほど使われています。切なさと前向きさが同居した感じでしょうか。
- 丸サ進行(FM7→E7→Am7→C7) … 椎名林檎「丸ノ内サディスティック」で有名な循環コード。おしゃれで少し都会的。ボカロでもとてつもなく増えました。
- 小室進行(Am→F→G→C) … 小室哲哉がよく使ったことからこの名前。疾走感があって、ループさせるだけで曲が前に進んでいく。私の初期の曲は、ほぼこれ一本。
- カノン進行(C→G→Am→Em→F→C→F→G) … パッヘルベルのカノンと同じ流れ。壮大で泣ける方向。8小節と長いので、そのまま使うと展開が固定されやすい。分岐が多数あり、変形版も多数あり。
使ってみた実感としては、どれを選んでも曲にはなります。「この進行じゃないとダメ」ということはほとんどなくて、鼻歌のメロディに合いそうなものを当てればいい、くらいの気持ちで大丈夫です。
ボカロ曲に関しては、そもそもみんなコード進行にこだわっていない印象があります。
転調をくり返したり、変わった借用和音を挟んだり、かなり自由。
なので「定番を外すと浮く」という心配も、そんなにいりません。ただ、気持ちよさは大事です。
本当に効いたのは、進行より「転回(ボイシング)」だった
ここが、この記事でいちばん言いたいところです。
同じ「F→G→Em→Am」でも、それぞれのコードをどの高さで鳴らすかで、聞こえ方がまったく変わります。
これがボイシング、具体的には転回です。
たとえばCのコード(ド・ミ・ソ)を、そのまま「ド・ミ・ソ」と並べるのが基本形。これを「ミ・ソ・ド」や「ソ・ド・ミ」に組み替えるのが転回です。
構成音は同じでも、音の並びと高さが変わります。

進行の中で全部のコードを基本形のまま置くと、コードが変わるたびに音がガバッと上下に飛びます。
これが「なんか素人っぽい」の正体でした。
転回を使って、隣り合うコードの音の高さをできるだけ揃えると、上でひとつのラインが滑らかに動いているように聞こえて、ぐっとそれっぽくなります。
例えば、C→Gという進行がある時に、Cをミ、ド、ソ、Gをレ、シ、ソにすると音程は揃います。
私は昔、これを全然知らずにやっていました。
しかも、あるYouTuberが「ボイシングなんて凝らなくていい、基本形で十分」というようなことを言っていて、それを真に受けて、ずっと基本形のまま置いていました。
あとで転回を覚えてから同じ曲を組み直したら別物になって、あの時間はなんだったんだとなりましたね。
あとは韓国YouTuberの、キックはボーカルの2倍にしろみたいなのも真に受け、無駄な時間を過ごしました。
進行を10個覚えるより、手持ちの1個を転回でちゃんと積めるようにする方が、曲のクオリティには効きます。
Scaler 3 は「最初にひととおり触る」のに向いている
コード進行を覚えたり試したりするのに、私は Scaler 3(Plugin Boutique)を使いました。
私が Scaler でやっていたことは、大きく3つです。
- キーを決めると、そのキーに合うコードの候補が並ぶ。そこから選ぶだけで進行になる。
- 「Songs」に定番進行やアーティスト風の進行がプリセットで入っていて、押すだけで鳴らせる。
- 組んだ進行はMIDIで書き出せるので、DAWのトラックにそのまま置いて、好きな 音源 で鳴らせる。

正直に書くと、今の私はコードを自分で置くので、Scalerはあまり使っていません。
ただ、最初の時期は、コードだけでなく、Scalerが出すベースやメロディのMIDIパターンもそのまま使っていました。
コードに対してベースがどう動くのか、メロがどの音を通るのか、というのを「完成品」の形で見られるのは、教材としてかなり良かったです。
以下ベースの例。

なので位置づけとしては、だんだん使わなくなっていく道具。
それでいいと思っています。
最初のうちに「進行ってこういうものか」を体で分かるための入り口として、価値があります。
Scaler 3 を実際に何曲か使ってどうだったか(効いたところ・期待外れだったところ)は Scaler 3 レビュー に分けて書きました。
Scaler 3 を Plugin Boutique で見る →
コードが決まったら、その先の調声やミックスの話は ボカロ曲のミックスのやり方 と 調声はやりすぎないほうがいい にまとめています。
そこから先は、わざと複雑にしていく
ある程度作れるようになってから、私は逆方向に振りました。
コードをなるべく複雑にする方向です。
昔は「コードはシンプルなほどいい」と思っていました。
実際、Max Martin のようなトップのソングライターは、1曲で6個くらいしかコードを使わないらしいです。
米津さんクラスでも、わりとシンプルな進行で名曲を書くことが多いでしょう。
でも、それはトッププロだから成立する話だと思っています。
シンプルで気持ちいい曲があったら、みんなプロの方を聞く。
私のような、まだ誰にも知られていないボカロPが同じ土俵で「シンプルで気持ちいい」をやっても、たぶん埋もれます。
だから私は、コードで引っかかりを作る方に寄せています。具体的には、こういうことをしています。あとは最近オルタード系にハマっています。
- コードに意味を持たせる。歌詞で人が死ぬ場面ならハーフディミニッシュを置く、不穏なところはオクタトニックスケールから音を借りる、など。
- クリシェ(コードを保ったまま内側の音を半音ずつ下げていく、もしくは上げる動き)で、じわじわ落ちていく感じを出す。内声とか外声とか色々あり。
- 定番進行のうち1〜2個を、テンションを足したコードや借用和音に差し替える。

これは「初心者は最初からこうしろ」という話ではありません。
まず定番進行ひとつをループで、1曲を最後まで作る。それができて、物足りなくなってきたら、一箇所ずつ複雑にしていく。
順番が大事です。
シンプルな進行が悪いわけでもありません。
ロックやポップスで王道進行をまっすぐ鳴らす、いい曲はいくらでもあります。
ただ、個人でボカロを出して聞いてもらうという条件だと、曲の完成度以外のところ(音・世界観・引っかかり)で違いを出さないと厳しい、というのが私の実感です。
この話は ボカロ曲が伸びない にも書きました。
まとめ
- コード進行はどれを選んでも曲になる。王道・丸サ・小室・カノンあたりから、鼻歌に合うものを借りればいい。
- 効くのは進行選びよりボイシング。隣り合うコードの音の高さを揃えるだけで、安っぽさが消える。
- Scaler 3 は最初にひととおり触るのに向いた道具。コードもベースもメロも「完成品」で見られる。使わなくなっていくのが正しい。
- 慣れてきたら、意味を込めて複雑にしていく。ただし「定番ループで1曲完成」が先。
音源をどうそろえるか(総合音源か、個別に買い足すか)は 音源のそろえ方 に分けて書いています。







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